夏にうれしい木綿の着物
木綿の着物は、本来は家着、普段着でした。また、商家や武家の家で「冬でも木綿の着物で生活する」ということは、「倹約する」という意味でもありました。木綿は庶民の普段着、商家や武家の使用人の着物だったのです。しかし、現代の着物事情では少し様相がちがいます。というのも、現代の生活では着物と言えば礼装、気の張るおしゃれ着がほとんどで、気楽に着物を着るということはそれ自体が贅沢で豊かな楽しみなのです。
「木綿はカジュアル」とはいうものの、現代ではカジュアルといえばジーンズにTシャツやポロシャツというのが一般的です。本当にカジュアルなシーンでは着物は似つかわしくない場合もあるため、やはり、食事や観劇、美術鑑賞など限られた場所になります。逆に、いくらお仲間同士とはいっても、高級レストランや料亭、また舞台に近い席での観劇は礼装の人も多いので、木綿の着物では少々軽すぎるかもしれません。そういう意味では、絹物の小紋や紬などよりも着ていける場所が限られます。木綿の着物で最もポピュラーなものは浴衣ですが、お祭りや盆踊りだけではなく、居酒屋や夜の寄席などに来ていくととてもおしゃれです。
木綿着物の種類
木綿は、昔は誰でもが身に着けたものですから、日本全国でごく普通に織られていました。その中でも、現代まで残って産業となっている地域があります。館林(群馬県)、浜松(静岡県)などは比較的安価で、子供用の生地もたくさんあります。出羽(山形県)、米沢(山形県)会津(福島県)片貝(新潟県)、伊勢(三重県)などは、色柄も豊富で15,000円ぐらいから買えます。久留米絣や薩摩絣なども20,000円ぐらいからありますが、これらの絣は伝統工芸としても有名で、著名な作家の作品だと20万円以上もする場合もあります。また、阿波しじら織は凹凸のある織物で、肌にあたる部分が少なく肌触りがよいので夏の着物として有名です。
若い人用には、服地で仕立てたものも販売されており、珍しいものではデニム生地のものもあります。
木綿の着物は基本的に単衣仕立で、冬は厚手木綿に冬用の下着を着ます。仕立てる前に水通しをしましょう。木綿は、水をくぐると縮みます。仕立てる前に一旦水に通して充分縮めておきましょう。既製品を買う時には、水通し済かどうか確認が必要です。綿は横縮みが少なく縦によく縮みます。水通しの確認ができないようなら若干長めを買っておいた方が無難です。
木綿の着物は自宅で洗濯できます。基本はたたんだまま、ぬるま湯で押し洗いです。ひどく汗が付いてしまった時には薄い中性洗剤溶液の中で押し洗いをしてから2,3度すすぎ、最後のお湯で薄くのり付けします。のりが濃すぎると、しわになりやすく、また、暑くもあります。洗い終わったら着物ハンガーにかけて陰干しします。生乾きの状態でアイロンをかければ霧吹きが要りません。アイロンの温度が高すぎたり、強く抑えすぎたりするとテカってしまいますので、必ず当て布をするか、裏側からかけるようにしましょう。
木綿の着物は、着物のイロハのお勉強にはもってこいです。仕立の練習はもちろんですが、既製品を買ったとしても、自宅で洗濯をして、きれいにしまうまで全て自分でやることが、着物への愛着につながるのです。
(ライター : n.m)