ウメチュウのビジュアルはかなりヤバい!
この言葉を、もう少しわかりやすく言い換えると「梅川忠兵衛の道行の舞台はあらすじもさることながら視覚的な美しさが素晴らしい!」ということになります。
2013年暮れ、京都南座の顔見世興行夜の部の演目の中に「道行雪故郷(みちゆきゆきのふるさと)」がありました。
飛脚屋の息子忠兵衛が預かった金に手を付けて遊女梅川を身請けし、二人で雪の中を逃亡する話です。
二人は新町(現在の大阪市西区四ツ橋付近)の遊郭から、新ノ口村(現在の奈良県橿原市新ノ口町)まで逃げます。
捕まれば死罪ですから舞台には悲壮感があふれています。
二人の衣装は比翼紋付きの黒の裾模様です。
なぜ、雪の中の逃避行に裾模様なんてエレガントなスタイルなのか?
普通なら旅ごしらえをしてから出発しますよね。
実はこの場面は、忠兵衛が梅川を身請けして、その祝いの席から着の身着のままの逃避行だという設定なのです。
遊女にとってもお客にとっても身請けは非常に名誉な祝い事ですからフォーマルな裾模様を着ていたのです。
黒の駒綸子に梅川の名にちなんだ梅の花と流水の図案を組み合わせた裾模様は、今の裾模様の感覚から見ると少々地味な感じもします。
比翼紋付きは、江戸時代に名家同士の婚礼衣装などに両家の家紋を一体化した紋を付ける風習にのって、二人が相思相愛であることを表現するものです。
駒綸子の裾模様にしても比翼紋にしても、庶民がそう簡単に出来る事ではありませんから、舞台演出上の華麗な演出と考えてよいのでしょう。
梅川は遊女なのでお引きずりの赤襟裏返しです。
赤襟裏返しとは、襟元で半襟を裏返して裏の真っ赤な生地を見せる着付けで、遊女独特のものです。
降りしきる雪、黒紋付き、赤襟裏返し、悲しさや切なさに満ち満ちた舞台ではっとするほどに美しい配色です。
そして、それを演じる俳優もまた美貌の人とあれば、梅忠のビジュアルはかなりヤバいのです。
(ライター : n.m)