世界に誇る歌舞伎の舞台装置

歌舞伎を見に行って、外国人の団体客と一緒になった人なら経験があると思うのですが、見せ場以外でオーッと歓声が上がって拍手が起きるところがあります。 「えっ、そこで拍手する?」という場面で拍手が起きるのです。
これは、中学生や高校生など歌舞伎に余り親しんでいない団体客と一緒になった時にもあることです。

その場面というのは、舞台装置の大掛かりなからくりが動いた時です。
普段私たちが何気なく見ている舞台装置は、歌舞伎を初めて見る人たちは大いに驚くファインプレーともいうべき見事なからくりなのです。

歌舞伎には居所変わりという演出があります。
俳優はじっとしているかほんの少し動くだけなのですが、背景の舞台装置が代わって俳優が居る場所を変えるのです。
いままで自宅にいた俳優がただ座っているだけなのに、背景が外出先に変わったりして場面が進行します。

回り舞台

歌舞伎の居所替わりの中でも最も大きな装置が回り舞台です。
舞台の中央を丸くくりぬき、切り抜いた部分を独立した舞台として上下に動かし、俳優にスポットを当てる効果や、逆に中央以外の部分を大きく動かして背景を変える演出に使います。
暗い背景が一瞬にして明るくなったり、貧しい家が一瞬でお屋敷に変わったりして、初めて見た人は意表を突かれるのです。

あおり返し

舞台の後ろ壁に薄い板を貼り、そこへ背景を描いておきます。
その薄い板は中央に切り目が入っていて、折り返すと別の薄い板が表れて舞台の背景が代わるというものです。
仕掛けが大きいのと背景の変化が一瞬なので、大きな拍手が起きることが多いのです。

がんどう返し

舞台の床と壁が一体になっていて、舞台上に俳優がいなくなると壁が前に倒れて床に変わり、今まで後ろに隠れていた新しい壁が現れるというもので、これも一瞬で背景が変わるファインプレーの一つです。
この背景が変わる時に鳴り物がどんでんと鳴るので、「どんでん返し」とも言われます。
日常で使われる「どんでん返し」という言葉の語源になった仕掛けです。

道具幕

舞台背景を描いた幕を落とすことで背景を変える方法です。
海の背景や山の背景・川の背景など色々な背景の幕があります。
屋外の景色を変える時に使われます。

ちぎっては投げ、ちぎっては投げ

豪傑が大勢の敵をやっつける比喩表現に「ちぎっては投げ、ちぎっては投げ」という表現があります。
歌舞伎では、これは比喩表現ではなく、現実に舞台の上で人が投げ飛ばされ、飛び交っているのです。
時には、胴体が上半身と下半身に分かれて飛び交うことがあります。
考えて見ればグロテスクな設定ではありますが、人形が無造作に投げられて飛び交う様子を見て、拍手とともに笑いも起きて劇場は大いに和むのです。

こういう瞬間って裏方さんたちもやり甲斐を感じる時なんだと思います。

(ライター : n.m

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