母が最も愛した着物生地屋は、大阪の四天王寺さんの露店
私の母は子育てが終わったころから和裁の勉強を始めて、20年以上、毎週お稽古に出かけていました。
長い間のお稽古ですから、教材の数も半端ではありません。
我が家では留袖から振袖、男物の着物などすべて母の仕立てです。
やがて父が亡くなり娘たちを嫁に出すと、今度は孫たちの着物が教材になりました。
最初のうちは古い着物を仕立て直していたのですが、そのうち生地が無くなってしまうと色々なところで買ってくるようにったのです。
ところが、母のお小遣いでは呉服屋さんのバーゲンは少々お高かったようです。
母が最も愛した着物生地屋さんは大阪の四天王寺さんの露店でした。
毎月縁日があるのですが、この縁日が母の着物生地の仕入れ日です。
まるで重要な仕事にでも行くように、朝早くから出かけて行っては生地を買ってくるのです。
買ってくるものと言えば、子供用のウールの絣生地、ポリエステルの可愛い和柄の端切れなど、他では絶対に手に入らないものです。
お蔭さまで我が家の子供は、七五三もお正月も全て和装。
ウールかポリエステルのものがほとんどで、手洗いしてアイロンをかけてから洋服ダンスの引き出しにたたんでおけば翌年もOK!という優れものです。
しかも素晴らしいことに、晴着類は襦袢から重ね襟まで全て一体型ですから着付けは超簡単!
これは、母が幼い孫を紐で締めつけることが無いように考えてくれた結果だと思います。
高級品なら、こんなにお手軽な気分で子供に着物を着せることは出来ませんでした。
着物って、良いものになるとほとんど芸術品のようなものがあります。
そのような着物を身に付けることは本当に幸せなことだと思うのですが、一方で手入れが簡単で価格も手頃なものを気軽に着るのも、これはこれで楽しいものですよ。
(ライター : n.m)