衣装見せのおかげでリサイクル着物店は宝の山!
最近は大きな繁華街へ出ると一軒や二軒必ずリサイクル着物のお店があり、比較的新しいものから昭和初期のもの、時には大正時代のものまで、所狭しと並べられています。
要は古着なのですが、お店によってはアンティークなんてスマートな言い方で販売されています。
一体この大量のリサイクル着物はどこから来るものなんでしょうか?
今から30年ぐらい前ごろまでは「嫁入り道具」というものがほぼ決まっていて、その中に数種類の和服がありました。
留袖、喪服、訪問着、附下などから小紋、紬類など最低でも各一品はそろえたものです。
娘が年頃になると母親はコツコツとそういうものを買いためたのです。
この他にもやれ絵羽織だ、一重ものだと買いためて、そういうものを花嫁タンスにつめて嫁入り道具にしました。
結婚式が済んで数日たつと「衣装見せ」というものをしたのです。
近所の奥さんや娘さんを呼んで、嫁入り道具、それも和タンスを開いてお嫁さんが持ってきた着物を披露するのです。
この時に嫁入り先で娘が恥をかかないように、また婚家に恥をかかせないように、多すぎるとわかってはいても着物一式揃えたのでした。
衣装見せが終わって数日は、その時に見た衣装の内容が、ご近所の奥さんたちの井戸端会議のテーマになりました。
「随分お金がかかっている。きっといい家の娘さんに違いない。」だの、「ちょっと貧弱だった」だのと、褒められたりけなされたりしたものです。
今考えればずいぶん困った風習ですが、多分日本中どこでも、このような風習はあったものと思われます。
今から50年ぐらい前までは、ごく普通に生活の中で着物を着ましたから、嫁入り道具は比較的適正に消耗されていたのです。
ところが、それ以降日本の生活習慣は大きく変わりました。
嫁入り道具はそろえたものの、実際に生活が始まってみれば普段の生活では着物はほとんど着なくなってしまったのです。
娘や孫娘の役に立つとはいうものの、礼装用以外は長い年月タンスの肥やしになって眠っていました。
それが、ここ10年くらい前からリサイクル着物となって市場に出回っているという訳です。
リサイクル着物の店を覗いてみると、銘仙やお召など今では貴重品ともいえる着物がたくさん並んでいます。
「ちょっと着」「おしゃれ着」の柄行きですから、そんなにお高くもありません。
このような着物は、もう10年もすればリサイクル店でもあまりお目にかかれなくなってしまうのではないでしょうか?
ほとんど袖を通していないものもたくさんあるので、リサイクル着物で気に入ったものを見つけたら本当にお買い得です。
(ライター : n.m)