浴衣の昔と今
今回は、浴衣の由来と着方の移り変わり、そして現在の着こなし方について簡単にご説明します。
普段着からおしゃれ着へ
昔、位の高い人は単衣の着物を着て入浴し、入浴後は現代のタオルの代わりに、数枚の着物を替えて体を拭いていたといいます。この単衣の着物を「湯帷子(ゆかたびら)」といっていたことから「ゆかた」となり、漢字の「浴衣」になったといわれています。
着物が生活着であった時代、肌ざわりのよい木綿の浴衣は、現代のTシャツと同じで生活に欠かすことのできない衣服でした。そして、浴衣がくたびれてくると、赤ちゃんのおむつや雑巾として再利用していたのです。
やがて洋服中心の生活になると、着物や浴衣を普段着として着る人は少なくなりましたが、現代では浴衣は夏のおしゃれ着へとイメージを変えています。
素材の多様化
昭和時代までの浴衣の素材は木綿でした。栃木県の真岡市は木綿の産地として知られ、浴衣といえば真岡木綿といわれていたほどでした。
また、白地に藍色の柄、藍地に白抜き模様が決まりで、柄も少しでも涼しく感じるように秋の花や昆虫が多くありました。着物の模様に江戸小紋の型染めがありますが、こちらの染め型は大中小と柄の大きさを分けていたのに対し、浴衣はその中形を使って染めていたからか、その呼び名が現在でも残っていて、浴衣全般を「中形(ちゅうがた)」とも呼びます。
現代では衣服の個性化が進み、浴衣も木綿ばかりでなく、ポリエステルや麻、綿などの混紡と、素材の種類も多様化しています。
足袋の効果
浴衣は夏祭りの晴れ着で、七夕をはじめ、さまざまな夏の祭りに欠かせないものとなっています。祭りに着る浴衣は、昔ながらの白地に藍や、その反対の藍地に白抜き柄です。
また、祭りといえばおみこしです。担ぐ人は主に足に紺足袋、練り歩く人たちは白足袋を履いています。どちらにしても、足袋を履いていると祭りの意気と粋が伝わり、その姿からは、日本の伝統文化の営みと人々の喜びを強く感じられます。
室内の踊りなどのお稽古ごとも、浴衣に足袋という姿で行われます。足袋は足元をしっかりと支えて動きを機敏にしてくれるだけでなく、白い足袋を履くことで素足より凛として見えるという効果もあります。
人生の節目に
昭和の中頃までは、お正月とお盆には仕立ておろしの晴れ着を着るという風習がありました。人々にとって、冬と夏に新しい着物を着ることができるのは、家族が幸福であるというしるしになっていました。
そんな風習にならって、現代では、比較的気軽に購入できる浴衣を毎年新調してみてはいかがでしょうか。新しい色や柄を選んで着るということは、いわば夏のお正月気分といったところで、人生の小さな節目を感じられるときでもあります。
新しい自分との出会い
ぜひ、暑い夏だからこそ秋冬にはためらってしまうような大胆な色柄をあえて着てみましょう。新たな自分を発見するというのはとても楽しいものです。また、それは来る秋に備えて自分に似合う色を探すという意味でも、とても有意義であるといえると思います。