最初の一枚に何を選ぶ?
着物に親しむには、まず着てみることが肝心です。レンタルしてもいいのですが、借りて一日着るのと、自分のものとして着たいときにいつでも着られるのとでは、相当に隔たりがあります。
とはいえ、初心者としては、どんな着物を選べばいいのかでまず迷ってしまうものです。そこで今回は、最初の一枚として何を選ぶべきかについてご提案したいと思います。
洋服に例えて考えてみよう
よく「色無地はとても便利である」と言われています。確かに色無地はいろいろな場面で使い回せて便利だし、無難でもありますが、実際のところ、色無地を普段着る人というのは、茶道をやっている人ぐらいのもので、そうでない人にとっては、留袖・訪問着・振袖などと同様に、正式の場でしか着ないフォーマルドレスのようなものです。
洋服を揃えようというときに、いきなりフォーマルドレスから買う人はまずほとんどいないと思います。つまり、着物も「今何を着たいか」で選べばいいのです。
そのためには、次のように着物の格や種類を洋服に変換して考えてみるのが一番分かりやすいのではないかと思います。
- 江戸褄=ウエディングドレスやローブデコルテ
- 色留袖=ローブデコルテそのもの
- 振袖や派手めの訪問着=かなり豪華なパーティードレス
- 付け下げ=カクテルドレス
- 小紋=アフタヌーンドレス・スーツ・ワンピース
- 紬全般=カジュアルな洋服
- 今風のファッション着物=今風の洋服
このようにTPOを考えて着物を選べばコーディネートは難しいものではありません。小物も全部これに準じて考えればいいのです。
むしろ、遊びや楽しみのため
色無地が便利というのは、いろいろな帯でいろいろな着こなしができる、いわゆる上級者目線の意見であり、着物で出かける用件がたくさんある人に限っての話なのではないかと思います。呉服屋さんでも「一枚は持っておかないと」と言われるかと思いますが、最初の一枚を買おうとしている人にとっては、それはひとまず「いつかは持っておいたほうがいいもの」くらいに考えておいてもいいのではないでしょうか。
今では結婚式ならドレスもあり、レンタルもできます。喪服も黒いスーツがあります。そういうフォーマルの場にはむしろ着慣れた洋服のほうが楽なはずです。初心者が着物を着たいシチュエーションというのはむしろ、遊びや楽しみのためなのではないかと思うのです。
地味めの小紋がおすすめ
最初の一枚としては、やはり地味めの小紋が適しているかと思います。それも、チェックなどの昔ながらの江戸小紋に近く、でも江戸小紋ほど渋すぎないという程度で、洋服に例えるならアフタヌーンドレスやワンピースにあたるものです。
紬もアリかとは思いますが、初心者には高価すぎます。安い紬もありますが、これは本当に安っぽく見えてしまいますし、結局はカジュアルな場にしか着て行けません。また、最初の一枚に頑張って紬を買い、どこへ行くにもそればかりになってしまうと、「あの人はアレしかないのね」と思われかねません。
ケバい色は避ける
最後に、着物を選ぶときはあまりケバくない色にすることをおすすめします。着物というのはあっという間に似合わなくなってきてしまうので、そのときかわいいと思って気に入っても避けたほうが無難です。
決して安い買い物ではないので、なるべく長持ちする色柄を選びましょう。