着付けをしてもらう、してあげるという行為
着物を着始めると、着付けをしてもらったりしてあげたりする機会が増えます。
しかし、してもらう側にもしてあげる側にも、注意すべき点があります。
着る人の意思を尊重
まず大切なのは、着物を着る人の意思を尊重することです。着物の着方に「絶対」はありません。マニュアル通りでない着方でも個性の表れであると受け入れられるだけのニュートラルな視点は持っていたいものです。
自分の好みや一般論を押し付けるだけの着付け方をする人は、真の着物好きとは言えません。
自己主張も大切
しかし、逆に言えば着せてもらうほうにも主張が必要だということです。「適当にやってください」ばかりではいつまでも着物は似合いません。
分からないなりに、「私はこう思うのですがどうでしょう?」と相談してみたり、やってもらったときに違うなあと思ったらちゃんと言ってみたりして、コンセプトやポリシーを相手に伝えましょう。この繰り返しこそが自分を磨き、また呉服屋さんや着付け師さんの質をも高くしていきます。
頼まれるまでは動かない
ただ厄介なのは、素人の中にも他の人を着付けるのが好きな人がいることです。親切心はありがたいのですが、ときには迷惑行為にもなりかねません。「帯を締めてあげる」と言われれば断れないですし、案の定気に入らない出来栄えだったとしても直すわけにもいかないのです。
したがって、着付けができる人の心得として、基本的には「頼まれるまでは動かない」という態度が必要なのではないかと思います。
「やってあげる」はやめておく
くれぐれも「やってあげる」というおせっかいはやめておくのが無難です。頼まれたら相手の好みを徹底的に尊重して自分の主張は抑える、あるいはあくまでも手伝いに徹する、初心者が着付ける人に依存しすぎていたら、自分の好みを持つように促すという程度にしておきましょう。
これほどまでに、着物の世界は個人主義なのです。